LOHAS(ロハス)なライフスタイルを創造する生活情報雑誌






身近なロハス

おかげさまで「ロハスサン」も創刊1周年を迎えることになりました。これまで「いつの間にかロハスになる生活習慣」を中心に、編集部では、さまざまな角度から「ロハス」を考えてきましたが、1年を振り返り、やっぱり遠いところで起きている環境問題よりも、自分の身の回りで起きているロハスの出来事に、しっかり目を向けてみたいと思います。
 そこで、今号から3回に渡り「いま起きている身近なロハス」をテーマに、自分たちの肌で感じる環境の変化をリポートしていきます。みなさんの意見をお待ちいたします。

LOHAS編集部 [2008.07.28]


Topic1 芝浦河口でスタートした「カモプロ」。スタッフの最大のテーマは、自然界にどこまで人が手を出すべきか。

「カモプロ」とは、芝浦アイランド(東京都港区)が開発される以前に生息していたカルガモを、ふたたび呼び戻す「カルガモの巣づくりプロジェクト」の通称。港区の住民が、地域の魅力を高めようと行なっている「港区ベイエリア・パワーアッププロジェクト」のうちのひとつで、芝浦アイランド南西護岸の干潟で行なわれている「生き物の住み処づくりプロジェクト」とも連携している。

「ぼくたちのプロジェクトは、最終的には芝浦河口の水を、人が泳げるくらい浄化することを目標にしています。『カモプロ』は、そのプロローグなんです」  とは、同プロジェクトのリーダーである榎本 茂さん。昨年の12月、約16名のスタッフとともに木製の巣と餌台を芝浦3丁目の渚橋のたもとに設置した。2×2mの巣の部分(カルガモが乗ったり降りたりするためのスロープ部が各辺70cm設けられている)には、約0.5立米の土を盛り、海水に強い草を荒川河口付近で採取し植えつけている。

「学校を卒業して就職した会社が芝浦であったこともあり、もう20年以上この土地で過ごしています」

 榎本さんが芝浦にやって来た当時、まだ近辺には葦をはじめとする水辺の草が生い茂り、繁殖期の初夏には、当たり前のようにカルガモ親子の愛らしい姿が見られたという。しかし、近隣の再開発や護岸工事によって、とんと目にすることがなくなった。そこで港区に働きかけ、先のプロジェクトを発足させたわけだが、ここで注目したいのは、榎本さんたちが大言壮語に「自然を呼び戻す」と言っていないことである。
「『カモプロ』をスタートさせた当初から、自然界の営みに人間が加担することはいかがなものか? という意見が少なからずありました。ぼく自身、実は『自然保護』というより身を呈してヒナ子を守る親ガモ、見よう見まねで親ガモの後を追う子ガモ。そんなカルガモ親子の生活を、日々目にすることは、子どもたちの『情操教育』になるのでは、と考えていたのです」

 小数意見として、榎本さんたちの活動を野良猫の餌つけに喩える人々もいる。猫ではなく、カルガモであればいいのかと……。確かに、それも正論かもしれない。しかし、人間の一方的な行為によって、少なからず動物たちの生態系を壊してしまった現実がある。かつて芝浦の河口で暮らしていたカルガモが、近隣の開発によって住みかをなくした。それを「自然の営みだからを手を出すな」と言って済ませていいのか? 野良猫やカラスの問題と、本質的に違うのではないだろうか?

「カモプロ」に関する問合せ先
芝浦港南地区総合支所 地区政策課 地区政策担当
電話:03-6400-0013 ファックス:03-5445-4590
メール:sk-kuminnokoe@city.minato.tokyo.jp

(写真1)
(写真2)

07年の12月、寒風吹きすさむ中、カモプロメンバーによって人、カルガモの巣となる浮島が、芝浦3丁目渚橋のたもとに設置された。

(写真3)

08年の5月には、植えつけた草々もしっかりと生い茂り、5羽のコガモがふ化。母親の後を追い、元気に泳ぐ姿を見かけるように。一躍芝浦の人気スポットに。

(写真4)

しかし、コガモはネコやカラスの襲来に合い、5羽のうち4羽が餌食に……。設置から現在の様子にいたる詳細は「カモプロ観察日記」を参照されたし。
http://minatoku.naturum.ne.jp/


Topic2 温暖化によって、魚の旬が激変。「遠くの火事」では済まされない。

(写真1)
(写真2)

沼津漁港に水揚げされた種々の魚。近海の、いわゆる「地物」、「遠洋物」ともに旬の変化が見られると、漁師たちは口々に言う。

 先ごろ、雑誌の取材で京都の料理店を取材した際、主人がハモの旬が変わってしまったことを嘆いていた。かつて京都では「ハモは梅雨の水を飲んで旨くなる」と言い、祇園祭の頃に食し、夏の到来を実感し、9月になると回遊から戻り脂の乗った「残りハモ」を松茸と合わせて楽しんだそうだ。ハモは、「初カツオ」、「戻りカツオ」と同様に、年2回の旬を、初夏と秋にそれぞれ楽しむものであった。それが、いまでは5月の連休には市場に並ぶようになったそうだ。

 関東でも、桜の季節に――、と思っていたサヨリやホタルイカが、2月には平気な顔して出回るようになった。ムギイカ(スルメの子ども)も、その名の通り麦の収穫期(5~6月)が旬であったのに、今ではその頃にはもう“スルメイカ”になってしまっている。学生時代に北海道にツーリングに行った際、霧多布の漁師に「9月頃、まだ回遊(南下する)前のサンマの稚魚を刺身で食ったら他の魚はもう食べられない」と教わった。でも、今では8月の末には「北海道産新物サンマ」が魚屋の軒先を飾る。

 もちろん、漁法や物流の変化が魚の旬を歪めていることもあるが、その主たる要因はやはり地球の温暖化だ。7月7~9日で行なわれた先の環境サミット(洞爺湖サミット)では、G8声明として「2050年までに二酸化炭素の排出量を半減させる」と発表されたが、これとて、中国、インドといった途上国の協力なくして実現できない絵空事だ

 魚の旬が変わることを、地球温暖化のひとつの現象として挙げるものの、そこから先を考える人は少ない。しかし、こと日本に限って言えば魚は「四季」を感じる上で、もっとも重要なものではないか。「野菜があるじゃん」という声が聞こえてきそうだが、考えてみて欲しい。野菜は、基本的に“養殖”なのである。人が種を蒔き、苗を植え育てる。もちろん、夏野菜、冬野菜といったようにそれぞれの生育に適した環境(季節)はあるが、すべて自然の営みの中で育てられた天然の魚介とは根本的に異なるのではないか。「四季があっての日本」と言ったら言いすぎか。


身近な魚に見られる旬の変化

サワラ

駿河湾以北では、晩秋から冬に「寒サワラ」として漁獲するが、消費量の多い関西では、字通り春を告げる魚で、3~4月の産卵期に外洋から内海に入ってくる頃が旬であった。瀬戸内海などでは、2月に見られるようになっている。

ブリ

大間のマグロに並ぶ高級ブランド「氷見の寒ブリ」で知られるように冬が旬。しかし、近年では春や夏に脂の乗りがちょうどいいブリが水揚げされることも。ただ、日本で消費されるブリの約7割が養殖といわれているため、季節感が希薄になっている魚でもある。

ハマグリ

かつては5月の産卵期を迎える前の、3月頃から身が膨れて美味しいとされていたが、いまでは冬からが旬。かえって海水が冷たいうちのほうが、身がしまっていて旨いとの声も。ただし国内産の話。ちなみにハマグリの呼び名は、その形“浜の栗”から来ているとも。

サンマ

旬云々の話しよりも、100年後には北海道根室沖の海水温度が上がり、サンマの生息域自体が変わると指摘する研究者も。となると、現在のように北海道から順次三陸、常盤と南下するルートもなくなり、秋の味覚としてサンマが食卓に上ることもなくなってしまう!?

キス

釣り好きでなくとも、浜辺でのキス、太公望が腰まで川に使って竿をさばく鮎の友釣りは、夏の風物詩。ともに晩夏に産卵期を迎えるため、初夏がもっと活発になるからだ。当然、食べても旨い。ところが、ここ数年日本海側では2月からキスが釣れ始めるそうだ。



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