「賢く生きる」それがロハスだと思います。マガジンハウス クロワッサンPremium編集長 島田 修さん
あなたは「ロハス」と聞いて、なにを、どうイメージしますか? なにも環境問題ばかりではないはずです。土の香りや潮騒の音に、また街角のカフェでお茶をしながら過ごす時間にロハスを感じる人もいるでしょう。ロハスに明確な定義はいりません。あなたが気持ちいいと感じるのと同じように隣人が、そして虫や鳥たちもが暮らせれば、それがロハスなのでは。もちろん、地球もです。ここでは、近ごろ話題の人々に自身で実践するロハスや、気になるモノ、人、世の中の動きなどをお話いただきます。第一回目は、50代の“上品元気”な女性を読書に持つ「クロワッサンPremium」編集長の島田修さんです。
LOHAS編集部 [2009.03.16]
——
「クロワッサンPremium」は“50代の女性をターゲットにした総合誌”という位置づけでいいのですか?
島田
そうです。いま、50代の女性がとってもアグレッシヴに生きています。自分自身の価値観を、しっかりもった人たちです。
——
島田さんは「クロワッサンPremium」を作るうえで、どのような部分をポイントにしているのですか?
島田
雑誌は、企画の対象によって、さまざまにアプローチの仕方が異なるので、記事制作のポイントは「これだ!」とはなかなか言い切れません。ただ、いくつか挙げるとすれば、まずは「ありそうでない物、事を探す」ということかもしれません。
——
それは、ありそうでない考え方、という意味もあるのですか?
島田
そうですね。特にインタビュー記事では、そういう部分をクローズアップすることは重要です。考え方は「視点」ということもできると思います。
——
なるほど。具体的にはどういうことですか?
島田
たとえば、企画に関して「あるそうでないもの」というのは“コロンブスの卵”的な発想です。しかし世の中を見渡すと、昔は当たり前に身の周りにあったことがなくなってしまった。
——
具体的には?
島田
たとえば、食に関していまの日本では、農薬や偽装など、10年前では考えられなかった問題が起こっています。雑誌の記事でも、単に「美味しい」という評価軸だけではなく、安全安心を無視できません。本当に美味しくて、安全な食べ物。これも、探してみると確信できるものは、思いのほか少ないんです。
——
2月号(08年12月発売)から始った「安全、安心な調味料」というシリーズ連載がそれですね。
島田
あ、読んでくださっているのですね。えらいなぁ(笑)。
——
2月号で醤油、4月号(2月20日発売)で味噌を取り上げていましたが、まさに日常的に使っている調味料ですが、まさしく目からウロコの記事でした。
島田
ありがとうございます。あの企画は、ぼく自身が個人的に疑問であり、不安に思っていたことを、きちんと整理したかったのです。
——
というと?
島田
たとえば、醤油や味噌の主原料である大豆についてお話をしましょう。日本には年間400万トン以上の大豆が輸入されています。そのうちの約7割はサラダオイルなどの製油原料となりますが、残りの120~130万トンは豆腐や納豆、また醤油や味噌などになって直接口に入ります。一方国内の大豆生産量は約23万トンですから、自給率でいうと20%程度になるわけです。
——
というと、ほとんどが外国産の原料を使っていると。
(写真1)「クロワッサンPremium」
島田
ほとんど、というにはちょっと語弊がありますが、日本の食生活に欠かせない食品でさえ、原料を輸入に頼らなくてはならない現状なのです。そんな状況で「国産=安心」、逆に「外国産=危険」という誤った認識が蔓延すると、本当に安全なもの、安心して食べられるものが見分けられなくなってしまうのではないでしょうか。
——
パッケージに「国産原料使用」とメーカーが記載するのは、それらがウリになるからに他ないですからね。
島田
それと、私たちの読者である50代の活動的で元気な女性たちは、たくさんの経験と知識を持っています。換言すれば、自分の価値基準をしっかり持っています。そういった人たちは、たとえばブランドの捉え方も若い女性と違い、単なるデザインや流行だけでは自分のライフスタイルに取り入れません。ファッションでいうならば、そのブランドがどうして存在しているのか、どういうふうに物を作っているのか。発売される商品だけではなく、そのブランドの背景にも目を向けます。
——
なるほど。たしかに、そういった方々を納得させるのはたいへんなことですね。私たちがイメージしている「ロハスな人」というのは「物事の本質を大切にする人」でもあると思っているのですが、お話を伺っていると「クロワッサンPremium」の読者とクロスオーバーしているような気がします。
島田
そうかもしれませんね。私自身は「ロハス」という言葉からは「賢い人」、または「賢く生きている人」をイメージします。
——
というと。
島田
賢い人、と言わないまでも「普通のことを普通にしている人、できる人」と言ったほうがいいかもしれません。
——
なかなか“普通”が通じなくなってきてますからね。
島田
そうなんです。昔の大人はみな朝起きたら新聞を読んでいましたよね。それが、いまではWebの見出しだけで済ませてしまう人が思いのほか多い。
——
たしかに、新聞の情報量は圧倒的ですし、Webのつまみ食いでは世の中の流れや動きが断片的にしかわかりませんからね。
島田
また、ペットボトルを捨てる場合、キャップを外し、ラベルをはがします。それは、いまの日本でのルールです。ところが、そのまま捨てる人が少なくない。キャップの付いた、またラベルがそのまま残ったペットボトルは、別の人に手間を掛けてしまうのです。私のマンションではほとんどの人が自分できちんと分別していますが、時たま、そのまま捨てられているペットボトルがあります。そうすると、管理人さんが1本1本その作業をするわけです。つまり、ルールを守らない人がいれば、秩序を保つために誰かがフォローせざるを得ない。そういうことをきちんと考えられるかどうか、それが「賢い」かどうかだと思うんです。かつては、常識として大人が身につけていたことですが、体だけが大きくなっちゃった人が増えていますからね。
——
その次を、きちんと考えられるかどうか、なんですね。
島田
いまの環境や資源の問題にしても、そうです。周りの国々のことや、次の世代の人たちのことをきちんと考えられるかどうか。そうすれば、いま、自分がなにをすべきかが、ちゃんとわかるはずです。
自転車で行動することもしばしば。ロハスを実践する日々。
(写真1)
島田さんのマイ箸。
(写真2)
自転車で取材に出かけることもしばしば。
飲んだ時は「もちろん押して帰ります!」
——
島田さん自身のロハスについて伺えますか。
島田
たとえば、会社や自宅の近所に取材や発表会で出かける時には、よく自転車を使います。でも、それはガソリンを節約するためにタクシーに乗らないとか、健康のためという理由ではないんです。ひとつは経費削減(笑)。そして、気分がいいからです。
——
マイ箸もお持ちなんですよね。
島田
ええ。ロハスサンの記事で言っているように、割り箸で食べるより美味しいからです。自転車にしてもマイ箸にしても、結果的に資源の節約につながるとは思いますが、それを第一義にしているわけではないんです。
——
あくまでも、気持ちのいいことが優先される、と。
島田
多少の語弊、また誤解を恐れずに言い切ってしまえばそうですね。何よりもよくなければ、いずれも実践していませんから(笑)。人に迷惑をかけることや、隠れてしなければならないことは、まちがっても「ロハス的」とはいえないでしょう。
——
今日は、お忙しいところありがとうございました。
島田さんの「気持ちいいからする、やる」という言葉に、飾りや建前はない。ひじょうにストレートに本音を言い表している。しかしそれは、往々にして最後にご自身が言っていた通り、時には「自分本位」と誤解を招く言葉かもしれない。建前と本音を、ここでどうこういうつもりはないが、建前だけでは、人は振り向かないし、行動しない。本音で勝負する雑誌は強いわけだ。
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